ピンクの港②
「アキラは東京行くんだな。」
チラッとアキラの方を見たが、アキラは前方の波が揺れているのをなんとなく見つめていた。特に何の感情も表情からは読み取れなかった。
僕の方に視線を向けずにゆっくりとアキラは頷いた。絶妙な速度とタイミングで。長い時間を共有してきたからなのか、僕がアキラの返事を受け取ったことを、つまりアキラが僕の質問を肯定したことを、アキラが受け止めたことを理解した。
アキラが東京へ行く、それはアキラと僕が離れることを意味している。
半年くらい前から分かっていた事だけど、実際に別れるとなるとこういう感情になるとは解っていなかった。
僕は今、自分の気持ちとか感情に気がついて焦っている。
「こんな気持ちになるとは思わなかったな。」
アキラが僕の方を向かずに話し始めた。
「私、島のことあまり好きじゃなかったけど、いざ離れるとなったらとても寂しい気持ちでいっぱいなの。」
たぶん、僕は一生この島から出ない。それは旅行に行ったり本土のデパートへ出かけたりはするかもしれない。でも、僕は死ぬまでこの島に住み続けるだろう。
だからアキラの気持ちはよく解らなかった。その事を理解するには、あまりにも僕とアキラは違いすぎたのかもしれない。あるいは、誰かが誰かの気持ちを理解する事など、最初から無理な話なのかもしれない。
ピンクの港①
朝の港は静かで、気温は低かったが良く晴れていたので気分は悪くはなかった。
もうすぐお昼になろうとしている今は、弱くない風が吹いていて手足が凍えそうだ。アキラがいなかったら最悪の気分だったかもしれない。いや、もうすぐアキラと別れなければいけない事が最悪だ。
僕たち島の住民は島に高校がないので、本土の高校に船で通う。
僕と漠は家が近所で同級生だったので、いつも一緒にいた。それこそ生まれた時から、幼稚園、小中高校とほとんどアキラと一緒にいた。
港から島を望むと左手に桜の並木があり、少しづつ散った桜の花が海に流されている。風に煽られて岸壁に押し寄せている様はどこか物悲しい。
それは僕らが高校を卒業して、離れ離れになるから、そう感じるのかもしれない。
アキラと並んで島を見つめてただ船が来るのを待っていた。
話したいことはたくさんあるはずなのに、何を話せばよいのか解らなかった。とにかく言葉が出てこなかった。
アキラも僕もおとなしいタイプなので、一緒にいてもとくに何も話さないことは普通だった。むしろ話さないことのほうが大部分だ。沈黙って感じでもなく、とくに話さないことを意識することはなかった。
でも、今は何かを言わなければいけないような気がしている。それが何なのか解っている。なのに、言い出せないでいることに焦っていた。
つづく。
ドナルド・マクドナルド・ハウス
ハンバーガーのマクドナルドが最大の支援企業である、公益財団法人を紹介します。
お子さんなどが遠方で治療を受けられるように、安価で滞在施設を提供してくれています。
自宅近くの病院で治療が受けられるのなら良いですが、そうでない場合にはたいへん役に立つ支援を提供してくれています。
どの病院の近くにあるのか一覧にしたリストがこれです。
日本全国のハウス一覧:ドナルドマクドナルドハウスとは|公益財団法人 ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン
アメリカ合衆国発祥の企業はいろいろな社会貢献活動が盛んなのかもしれませんね。