ピンクの港①
朝の港は静かで、気温は低かったが良く晴れていたので気分は悪くはなかった。
もうすぐお昼になろうとしている今は、弱くない風が吹いていて手足が凍えそうだ。アキラがいなかったら最悪の気分だったかもしれない。いや、もうすぐアキラと別れなければいけない事が最悪だ。
僕たち島の住民は島に高校がないので、本土の高校に船で通う。
僕と漠は家が近所で同級生だったので、いつも一緒にいた。それこそ生まれた時から、幼稚園、小中高校とほとんどアキラと一緒にいた。
港から島を望むと左手に桜の並木があり、少しづつ散った桜の花が海に流されている。風に煽られて岸壁に押し寄せている様はどこか物悲しい。
それは僕らが高校を卒業して、離れ離れになるから、そう感じるのかもしれない。
アキラと並んで島を見つめてただ船が来るのを待っていた。
話したいことはたくさんあるはずなのに、何を話せばよいのか解らなかった。とにかく言葉が出てこなかった。
アキラも僕もおとなしいタイプなので、一緒にいてもとくに何も話さないことは普通だった。むしろ話さないことのほうが大部分だ。沈黙って感じでもなく、とくに話さないことを意識することはなかった。
でも、今は何かを言わなければいけないような気がしている。それが何なのか解っている。なのに、言い出せないでいることに焦っていた。
つづく。