チャリボラ研究所

チャリティーやボランティアのコミュニティーを目指します

ピンクの港①

 朝の港は静かで、気温は低かったが良く晴れていたので気分は悪くはなかった。

 もうすぐお昼になろうとしている今は、弱くない風が吹いていて手足が凍えそうだ。アキラがいなかったら最悪の気分だったかもしれない。いや、もうすぐアキラと別れなければいけない事が最悪だ。

 僕たち島の住民は島に高校がないので、本土の高校に船で通う。

 僕と漠は家が近所で同級生だったので、いつも一緒にいた。それこそ生まれた時から、幼稚園、小中高校とほとんどアキラと一緒にいた。

 港から島を望むと左手に桜の並木があり、少しづつ散った桜の花が海に流されている。風に煽られて岸壁に押し寄せている様はどこか物悲しい。

 それは僕らが高校を卒業して、離れ離れになるから、そう感じるのかもしれない。

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minato-ichiによるPixabayからの画像

 アキラと並んで島を見つめてただ船が来るのを待っていた。

 話したいことはたくさんあるはずなのに、何を話せばよいのか解らなかった。とにかく言葉が出てこなかった。

 アキラも僕もおとなしいタイプなので、一緒にいてもとくに何も話さないことは普通だった。むしろ話さないことのほうが大部分だ。沈黙って感じでもなく、とくに話さないことを意識することはなかった。

 でも、今は何かを言わなければいけないような気がしている。それが何なのか解っている。なのに、言い出せないでいることに焦っていた。

 

つづく。